三、世に母も子を救い得ず、子も母を救い得ない三つの場合がある。すなわち、大火災と大水害と、大盗難のときである。しかし、この三つの場合においても、ときとしては、母と子が互いに助けあう機会がある。 ところがここに、母は子を絶対に救い得ず、子も母を絶対に救い得ない三つの場合がある。それは、老いの恐れと、病の恐れと、死の恐れの襲い来たったときのことである。
母の老いゆくのを、子はどのようにしてこれに代わることができるであろうか。この病む姿のいじらしさに泣いても、母はどうして代わって病むことができよう。子供の死、母の死、いかに母子であっても、どうしても代わりあうことはできない。いかに深く愛し合っている母子でも、こういう場合には絶対に助けあうことはできないのである。
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四、人間世界において悪事をなし、死んで地獄に落ちた罪人に、閻魔【えんま】王が尋ねた。「おまえは人間の世界にいたとき、三人の天使に会わなかったか。」「大王よ、わたくしはそのような方には会いません。」 |